経営者のための事業承継とは? Part6(最終回)

2018年1月18日

こんにちは。

司法書士・行政書士の千葉諭です。

「経営者のための事業承継とは?」というテーマで連載してきましたが、今回は、最終回。

法的な手続きを利用した事業承継に触れてみたいと思います。

 

主に、経営を左右する株式の議決権の側面から検討していきましょう。

前提としてご理解して頂く必要なことは、株主総会の決議には、取締役や監査役の選任や解任などを行うことができる「普通決議」、そして定款の変更や事業の譲渡等を行うことができる「特別決議」とがあることです。

簡潔に記載しますと、「普通決議」は株主の議決権の過半数の同意が必要となり、「特別決議」は株主の議決権の3分の2以上が必要となるということです。

つまり、会社を意のままに動かすには、「特別決議」を承認可決できる議決権を有することが重要ということです。

私が行った事業承継の手続きは、以下のようなものです。

遺言書の活用

遺言書とは、生前に、ご本人の意思を書面に残しておくことによって、亡くなった後にそれらの遺言書に記載している内容実行させることができるようにするものです。

仮に経営者が突然にお亡くなりになったとき、お子様が沢山いらっしゃったとすれば、経営者が所有していた株式がそれぞれのお子様に均等に配分されてしまい、会社の経営に関する事柄を決定することが困難になることが考えられます。

従って、まず、経営者に後継者に会社の株式を相続させるという内容の遺言書を書いてもらうことにしました。

こうすることによって、株式が分散するのを避けることができ、後継者以外の方が会社の株式を取得することができないようにすることができる訳です。

 

種類株式を発行する

さらに、この会社には、経営者以外の方も株式を所有していらっしゃいました。

そこで考えたのは、議決権が制限された株式(株主総会において株式を発行できない)を新たに発行し、その経営者以外の方の所有していた普通株式と交換したのです。

株主の中には、会社の経営権、つまり株式の議決権に全く興味のない方も多くいらっしゃいます。

このような方にとっては、議決権のある株式を所有し続ける必要性はなく、議決権を制限した株式に交換して株式の配当を得るだけで十分な方も少なくないのです。

つまり、後継者候補の方に議決権のある株式を集中させる、もしくは現経営者が議決権のある株式を交換で取得し遺言書によって後継者に相続させる。

このような手法で、後継者の方に議決権のある株式を集中させることができるのです。

さて、今回も字数の関係であまり詳細な事例を記載することはできませんでしたが、全体を通してご理解いただきたいのは、会社の数だけ、事業承継の方法の数があるということ。

会社の状況に応じて、事業承継の方法を柔軟に考えていく必要があります。

私自身も、様々な経験を活かし、ご相談いただいた会社に応じた事業承継のお手伝いをしていきたいと常に思っていますし、また、皆様と一緒に事業承継の問題に取り組んでいきたと思っています。

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